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vol.02『トイ・ストーリー4』とメリーちゃん

『トイ・ストーリー4』を鑑賞した。
私はトイ・ストーリーは【3】をいきなり映画館ではじめて観て号泣し、そこから追っかけで【1・2】を観たという経緯ながら、
この物語の大ファンであります。
【3】でおしまい、と思っていたけれど【4】が公開!ということで、6月から前売り券を購入し準備万端。しかし、前売りを買ってある安心感と“当分の間上映されているだろう。なにせ世界中で愛されているトイ・ストーリだからな!ボヘンミアン・ラプソディなんてまだやっているんだゾ”と、勝手にタカをくくっていたら9月に入ると上映回数が
2回に激減していて慌てて観に行った。

行く前にネタバレしない程度にレビューをチェックすると賛否両論だった。トイ・ストーリー好きの友人と行ったのだが、友人も賛否に分かれるところが気になっていた。しかし「賛」でも「否」でもこれがほんとの最終章だと思われるので「見届けなければ!」と言いながら劇場に入った。

はじまると物語に引き込まれ、中だるみも全くない。
どこに「ぴ(否)」があるのだ!?素晴らしいではないか!と、
途中何度も胸中で言葉を発した。そして、ラストシーン。
ああ…「ぴ」の人たちはこの結末に納得いかなかったのだな、
と分かった。同時に隣では友人が鼻をすすって泣いている。
うん、私はこの結末に納得だぞ。「さん(賛)」だぞ「さん」!
エンドロールが流れている間、私たちが座った列は誰も席を立たず、
真ん中に座っていたのでエンドロールが終わるまで座っていた。
すると、エンドロールの最後に亡くなったスタッフ2名の名前が大きく映し出された。トイ・ストーリーシリーズの長さを彷彿させ、
その最終章と思うと胸に込み上げてきた。

エンドロールも終わり席を立ち、私と友人は
「ぜんぜん“ぴ”じゃない!“さん”だよ“さん”」と言い合った。
まだ上映中なので『トイ・ストーリー4』の話はここまでにしておこう。

私がこのトイ・ストーリーを大好きな理由のひとつに
「おもちゃというのは、ペットの犬や猫のように、飼い主・持ち主のことが本当に純粋に大好きなんだなぁ」ということを健気なまでに伝えてくれるところ。そして、トイ・ストーリーを見るたびに、私は「メリーちゃん」のことを思い出すのです。

「メリーちゃん」は、私が小学1年生か2年生ぐらいの頃に買ってもらった、子ひつじのぬいぐるみ。忘れもしない、東急ストアの小さなおもちゃ売場でワゴンに大量に積んであったメリーちゃんに一目惚れして、ねだってねだって買ってもらった。たしか680円か980円。
私は小さな頃から動物が大好きで、特に犬が大好きだった。
動物と暮らしたくて、犬と暮らしたくて、両親に「犬が欲しい」と、
何年も訴えアピールをしていたが「犬はおもちゃと違うんだから!
責任持って面倒見られるのか!」等々言われながらも、へこたれず、
あきらめず、家の中にある小さな黒板に「いかにして自分が犬を面倒を見るのか」ということを、日々書いて両親にプレゼン&アピールを続けていた。

メリーちゃんは、つぶらな瞳でにっこり微笑み、ぴょこんと跳ねた
小さな耳もとても可愛いかった。私は犬の代わりのようにメリーちゃんをそれはそれは可愛がった。おんぶや抱っこ、おやつもせっせと食べさせていた。もちろん寝起きも共に!ミルク色のメリーちゃんは、もはやドブねずみ色に!何度も洗濯を繰り返し、圧縮を感じられても
メリーちゃんの可愛さと愛情には何の支障も及ぼさない。

その頃すでに中学生だった姉が機嫌のいい時にメリーちゃんの声になって「メリーですがな!」と、遊んでくれる時間もとても好きだった。(なぜ、大阪弁なのかは分からないが…)そして、姉が演じてくれるメリーちゃんの得意な歌は桑名正博のセクシャルバイオレットNo.1だった。(なぜ、桑名正博だったのかは分からないが…)

メリーちゃんの「セクシャルバイオレットNo.1」が聞きたくなると、
メリーちゃんを差し出して姉にねだった。ノリノリで「セクシャルバイオレットNo.1」を歌うメリーちゃんは本当に可愛かった。

ある日「今度、犬がうちに来るよ」と、まさかの報せを両親から受けた。私には全く知らされていなかったのだが、私が懇願のプレゼンを続けている間、編集者であった父は子犬の写真を撮っているカメラマンに「いい子犬がいたら教えて」と、水面下で頼んでいたらしい。
青天の霹靂!狂喜乱舞!天を突き破るようなジャンピング!
私は全身を上げて喜んだ。早速、犬の名前を考えたり、自分が使っていたお椀を犬の水飲み用に譲ったり、迎え入れる準備をワクワクしながら指折り待ちわびていた。

そして、小学3年生の3月の冷たい雨が降る日。
念願の子犬がやって来た!赤いバスケットに入れられていて、
想像よりも遥かに小さくて、想像よりも遥かに可愛いマルチーズの
子犬だった。ほんとうに、びっくりするほどの可愛さだった。
犬の名前はロッキー。手のひらに乗るほど小さな子犬を見た私は
「こんな小さなうちからお母さんと離されちゃったんだな。。。
よし!たくさんたくさん、可愛がるぞ!!!」と、固く心に誓った。
そして、心細そうに不安そうな目をしていた子犬のロッキーは、
我が家に着いてほどなくして私の膝の上でお腹を見せながら安心したように爆睡した。

ある日、メリーちゃんがいないことに気がついた。
家中どこを探してもメリーちゃんがいない!
何日も必死になってメリーちゃんを探す私に、母と姉が
「きっと、ロッキーが来たからメリーちゃん、自分の役目が終わったと思ったんだよ。。。」と、悲しみが100倍になるようなことを言った。泣きそうな私は言われなくてもそれが分かっていた。
メリーちゃんは犬の代わりではない、メリーちゃんは唯一無二のメリーちゃんだったのに。姿を消す必要なんてなかったのに。

その2年後、我が家は同じ市内に引越しをした。
引越しの時にはメリーちゃんが出てくるだろう!と思ったのだが
メリーちゃんはとうとうどこからも出てこなかった。

今回『トイ・ストーリー4』を観て、またメリーちゃんのことを思い出したのでした。おもちゃやぬいぐるみというのは、持ち主の子供に対してどこまでも優しくて愛情深くて、いっしょに遊ぶことが何よりの幸せ。というのは本当の話だと思う。その本質を『トイ・ストーリー』で表現し続けたピクサーは凄いなぁ、と感服しています。


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